茶の湯の魅力は、亭主が客人のためにしつらえた茶席を見ることができるのも楽しみの一つです。客人たちが驚くような茶道具は、特別な日のために準備されたものであり、親しい間柄でも容易に鑑賞することはできません。そのため、今も昔も茶人たちは、他者がどのような逸品を持っているのか気になります。
室町時代、北九州市の一帯を構成する豊前や筑前は、山口を拠点とする守護大名大内氏によって支配されていました。茶の湯にも造詣の深い大内氏は、その中心地である京との交流を深めて山口や北九州にも茶の湯文化をもたらしました。
その後、大内氏の滅亡や関ヶ原の合戦を経て北九州と山口は別々の支配下となります。「となり」となった周防・長門国では、千利休の高弟である古田織部に学んだ長府藩初代藩主・毛利秀元(一五七九‐一六五〇)が大名茶人として名を馳せ、茶の湯を通じて諸大名と深く交流しました。
本展では、文化的、精神的な側面を持ちながら、政治的な交流の場として茶の湯をたしなんだ周防・長門の武将が愛した茶道具を紹介します。海を隔てて「となり」に位置しながら、意外と知らない周防・長門国に伝わる茶の湯の魅力をどうぞお楽しみください。